こだわり写真家のTさん

生徒のTさんは動物写真家。暇を見つけては遠くの大自然あふれる場所へ出かけ、「最高のショット」を求め続ける。真夏の山々、厳冬のオホーツク海、普通の人なら到底耐えられない場所に何時間も張り込み、その瞬間を待つ。彼いわく、写真は釣りと同じだそうだ。高い宿泊費や運賃を払って現地に赴いたからと言って、狙った獲物が撮れる保証などない。ボーズで帰ることもしばしば。 そんな彼を、奥さんは呆れ顔で見ている。(当然だわなあ、アッごめんTさん!)

なぜそこまで動物写真にこだわるの?とたずねる私にTさんはひとこと答えた。「そこに動物がいるから」

たとえばこの写真を見てほしい、シャケをくわえたヒグマ、親からエサをもらおうと、3匹同時に口を開けるクマゲラの子。ほんの数秒しか見られないシーンをカメラにおさめたときの満足感や達成感。それがすべてなんです。

すごいなあTさん、そこまでこだわりを持てるなんて。僕には到底まねできない。そこがTさんのTさんたるゆえんなんだろうね。これからも最高の写真が撮れるよう、応援します。

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時事英作 JR特急火災

北海道新聞 7月10日朝刊記事より抜粋したものを英訳してみます。

一歩間違えば大惨事につながったJR函館線の特急北斗14号の出火事故。The fire that occurred in the super express train, Hokuto 14 of JR Hakodate line could have turned into a fatal disaster.

国土交通省運輸安全委員会調査で、エンジンの燃料噴射ポンプ内の部品「スライジングブロック」が折れていたことが判明。 As a result of the investigation by MLIT’s safety committee, what is called “sliding blocks” were found bent and broken inside the fuel injection pump.

この部品の破損が関係する事故、トラブルは3回目。しかも3か月前に新品に交換されていたばかりだった。

This is the third time that an impairment of this part has caused either an engine failure or a major accident. Moreover, the parts had been replaced for new ones three months before.

列車の心臓部ともいえるエンジンで何が起きたのか。なぜ再発が防げなかったのか。What happened with the engine, which is the heart of a train?  Why couldn’t another accident be prevented?

 

 

 

 

 

金と銀 遠藤周作

ところで遠藤周作さん、私が一番感動した作品、なんだと思われます? 実は「金と銀」なんです。 ほら、東京の安アパートで暮らす3人の若者の物語ですよ。とっても面白くて、一晩で読んでしまいました。読み終えて時計を見ると午前2時。翌朝起きられなくておふくろに怒鳴られたっけ・・・

うろ覚えですけどストーリーはこんな感じでしたね。

定職を持たず、バイト暮らしの3人。安酒をかっくらいながら自由気ままな暮らしをしていた。そんな生活に疑問を持ち始めた1人がある日切り出す。

「おい、おれたちいつまでもこんな暮らし続けてちゃいけないと思うんだ。」

「なんだよ急に」

「いや、おれたちいつまでも若いわけじゃないだろ。」

「まあ、そうだよな」

「どうだ、いっそのことこの部屋を出てばらばらに暮らそう。それぞれの人生見つめなおそう」

「もう会わないのか、おれたち?」

「いや、まて。こうしよう。一年間は互いに会わず、連絡も取らないでおこう。そして来年の今日、東京タワーの下に集まろう。誰が一番金持ちになっているか、競争しようじゃないか」

「おもしれえ、やろうやろう。」

「まあ、なんだな。一番の金持になるのはきっと俺様さ。ベンツに金髪ギャルを載せてやってくるぜ。」

「なあに言ってるんだ。お前なんかせいぜいリヤカーだろうが。」

「なんだとお、てめえ。」

じゃれあいながら笑う3人。そして翌朝、住み慣れたアパートを引き払うのだった。

しばらく無言で歩く3人。やがて交差点に立ち止まる。

「ここで別れよう。俺はまっすぐ行く。お前は右を行け、お前は左だ。いいか忘れんなよ。来年の今日、東京タワーの下だからな」 「おう」 「じゃあな」

3方向に分かれて歩く若者たち。この時選んだ道がその後の人生を大きく左右することを、彼らはまだ知らなかった・・・

 

下手なあらすじですねえ。お怒りにならないでください遠藤さん。

私はいつも思うのです。あの日3人がわかれた交差点のことを。もし別の道を歩いていたら、その後の人生がどうなっていただろうかを。

いま仕事がらたくさんの小中高生に英語を教えています。勉強に身が入らない時、よくこの小説のおはなしをするんですよ。3人が交差点で別れる場面で私は話をやめることにしています。

するとたいていの子供は聞きいてきます。「ねえ、その後3人はどうなるの」と。

私は意地悪く答えます。「知りたいか? じゃあ勉強に戻ろう」と。